未熟女でも大人になっていいですか?
「まさか、それもこの手紙を書く為の手段だったとか?」


大人しいバンビだと思ってたけど、とんでもない狐か狸だったようだ。


「それなら負けてなんかいられない。きっちりと落とし前をつけ返してやらないと!」



後から思えば、それも自分の勘違いだったけど、この時はそれに気づかず封を切った。

中から出てきたのは添え文みたいな手紙と写真が数枚。


「『この度が初めての顔合わせとなりますので、写真を数枚同封させて頂きます』…って、知ってるわよ。顔くらい」


この段階で気付けば良いものを頭に血が上ってた私は気づかないまま、手紙に書かれてある店に向かうことにした。




仙道 保が逢瀬に選んだ場所は、お洒落な外観で有名な喫茶店だった。

この間初めて入ったデパートのフルーツパーラーよりも高級感が漂うお店で、そこに着くまでの間、私はもう一度その手紙を読み直した。



『初めまして、ヤマガタ ミツ様。僕の名前は『仙道 保』と言います。

貴女のことを先程父から初めて聞かされ、かなり驚いた状況でこの手紙を書いています。

まさか自分にそんな存在の方が決められていたとは知らず、こんなことならもっとマシな職業に就いていれば良かった…と、今更ながらの後悔をしているところです。


僕は現在、左官という仕事に就いております。

内容は主に家の内壁や外壁の塗装をし、たまに台所の床にセメントを流して均したりする仕事を行っています。




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