未熟女でも大人になっていいですか?
下手な嘘をついて蜜が僕のことを庇う。それがまた父親には気に入らない。


『腕がどんなに良くても冴えない仕事だ。お前の選択は間違っとる!』


『別れなさい』と目の前で言われた。

ぐっと歯を食い縛る自分とは違って、蜜は雄々しく食い下がる。


『嫌よ!私は保さんが好きなの!彼とお付き合いを続けたい!どんなに父様が反対しても別れたりしないから!』


仕事も父親の顔色を伺って選んだ女とは思えないくらいに言い張った。

父親は恐ろしい顔つきで僕を睨み、娘と顔を突き合わせた。


険悪なムードのまま外へ出ると、蜜はボロボロと涙を零して泣き始め……


『ごめんなさい。分からず屋な父で……』


幼い頃から甘やかされて育った娘だと聞いた。

蜂蜜のように甘やかして育てながらも、蜜の自由は父親に奪われていた。



『何処へ行くにも父様の許可がいるの。例えばそれが学校の行事でも』


窮屈過ぎる愛情は根深い不信に変わった。

そして、それは堰を切ったように表へと溢れ出てきた。




「どうして保さんと会ってはいけないの!?あの人はいい人よ!優しいし思いやりがあるし、紳士です!」


その日のデートの帰りが遅くなり、父親に初めて打たれたと聞かされた。

泣きながら反骨精神を丸出しにして、父に刃向かったそうだ。


「父様は何も知らないくせに保さんを悪く言う!そんな父様は嫌いです!!」


「わしは左官なんて仕事をしている奴にロクなのはおらんと言ってるだけだ!お前が苦労するだけなんだから付き合うな!」


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