未熟女でも大人になっていいですか?
偏った意見に髪を振り乱して怒り、泣きながら僕に電話を掛けてきた。
「保さん、私はどうすればいいの!?」
受話器の向こうから聞こえる声は悲しみに暮れていた。
「父様は頑固に付き合いを反対する。私はただ幸せになりたいだけなのに……」
父親に認めてもらえないのは辛いらしい。
でも、それを言うならこっちも同じだ。
僕の父親も蜜との付き合いには反対だった。
僕には仙道家の大恩人の娘との縁談が生まれた頃から決まっていた。
『先方は代々医者や教授ばかりが出揃っている家系だ。お前も婿入さえしてしまえば、嫌な左官工なんてやらずに済む。
勉学に励む機会ももう一度与えて貰える。そうしたら学校の教諭になることだって夢じゃない』
諦めた夢の話を持ち出された。
そんなことが決まっていたのなら、蜜に会う前にして欲しかった。
『そんな間違いで見合った女と付き合って何になる』
父親の言葉に逆上して家を出た。
三軒隣の左官工の爺さん家に転がり込んで、黙々と仕事を覚えている最中だった。
「蜜、時間がかかっても親を説得しよう」
宥めすかして電話を切った。
胸の中に漂う思いは、いつも甘いだけとは限らない。
「ーー親に反対されとるのか?」
爺さんは電話の内容を聞いていたようだ。
「ええ。どっちの両親も僕達の付き合いには反対で……」
「親なればこその思いがあるからな。それだけ深く思ってくれる人が居るだけでも有難いってもんだ」
「保さん、私はどうすればいいの!?」
受話器の向こうから聞こえる声は悲しみに暮れていた。
「父様は頑固に付き合いを反対する。私はただ幸せになりたいだけなのに……」
父親に認めてもらえないのは辛いらしい。
でも、それを言うならこっちも同じだ。
僕の父親も蜜との付き合いには反対だった。
僕には仙道家の大恩人の娘との縁談が生まれた頃から決まっていた。
『先方は代々医者や教授ばかりが出揃っている家系だ。お前も婿入さえしてしまえば、嫌な左官工なんてやらずに済む。
勉学に励む機会ももう一度与えて貰える。そうしたら学校の教諭になることだって夢じゃない』
諦めた夢の話を持ち出された。
そんなことが決まっていたのなら、蜜に会う前にして欲しかった。
『そんな間違いで見合った女と付き合って何になる』
父親の言葉に逆上して家を出た。
三軒隣の左官工の爺さん家に転がり込んで、黙々と仕事を覚えている最中だった。
「蜜、時間がかかっても親を説得しよう」
宥めすかして電話を切った。
胸の中に漂う思いは、いつも甘いだけとは限らない。
「ーー親に反対されとるのか?」
爺さんは電話の内容を聞いていたようだ。
「ええ。どっちの両親も僕達の付き合いには反対で……」
「親なればこその思いがあるからな。それだけ深く思ってくれる人が居るだけでも有難いってもんだ」