未熟女でも大人になっていいですか?
天涯孤独だという爺さんは小さく笑った。

その横顔を眺め、何とか円満に解決したいと願っていたけれど……。



人生は皮肉にも曲がり始める。

付き合いだして1年目が過ぎようとしていたある日、それは形となって現れた。ーーーー





「見合い……?」


蜜の口から出た言葉を繰り返した。


「父様の上司の息子さんらしくて……どうしても断れないからお会いしろと言われたの……」


悔しそうな表情を浮かべて泣き出す。

朗らかな彼女の顔は、この最近涙色に染まってばかりだ。


「私には保さんがいるから嫌だと言うのに聞いてくれないの。私はどうしていつまでも、父に自由を狭められてしまうの?

甘やかされて育てられると言うのはそういうことなの!?幸せに対する権限すらも与えて貰えないの!?」


泣き崩れる肩を抱いた。

これまでは親に遠慮をして、一切の手も出してこなかったけれどーーー



「泣かないで蜜……君が泣くと胸が痛い」


締め付けられるような痛みに襲われる。


その痛みを抱え込んだまま彼女の唇を奪った。


泣き腫らした目の中に映る自分が真剣そのもので、その表情のままで彼女に伝えた。


「僕のものになって欲しい。蜜を誰にも渡したくない」


生まれて初めての闘志を燃やした。

うっとりした眼差しで見つめられ、蜜が嬉しそうに語る。


「貴方は私の理想通りの人ね。やっぱりバンビじゃなかったんだわ」


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