未熟女でも大人になっていいですか?
駆け出した恋は愛に変わり、一粒種の『藤(かつら)』が生まれたのは、それからもう1年が過ぎた春。



「ほーら、高い高い!」


肩車が大のお気に入りの娘はキャキャと喜びの声を上げる。

笑った顔が蜜に似ている。

だから、その顔が見たくてついつい笑わせてしまう。



「保さんは藤が大好きね」


やきもちの様な言葉を聞いて蜜のことも抱き留める。



「妬かない妬かない」


両手に持った宝は僕にとって幸せの象徴だ。

けれど、それは永遠には続かなかった。

僕は知らぬ間に病魔に侵された。

沈黙を守っていた病巣が広がり、手の施しようが無くなってから初めて顔を覗かせたーーー。




< 202 / 208 >

この作品をシェア

pagetop