未熟女でも大人になっていいですか?
「保さん、私を迎えに来るのはいつ?藤が先生になった時?それとも20歳を過ぎたら?」


『いつにしようか』


声が聞こえてきそうで胸の中が弾む。


「私は直ぐにでもと言いたいところだけど駄目ね。藤が大人になっていないもんね。あっ!じゃあ藤が大人になれそうな時が来たら迎えに来て!

私、それまでにしっかりと準備を進めておくから!藤が生活に困らないようお金もきちんと貯めておくわ!」



『先のことになるかもしれないよ』


見越してるかの様な返事が耳の奥に届いた。


「いいの。それまではずっと貴方のことを思い続けていられるし、此処へ来ればこうして2人だけで話せるから」


空耳でもいいから声を感じて生きたい。

だから、暇さえあれば納骨堂へ来てる。



「保さん、貴方を永遠に想っているのは私だけよ。これから先もずっと貴方だけを見つめていくのーーー」


藤が中学生になっても、高校生になっても想い続ける。


だから、貴方の写真は家では飾らない。



「本当は法事なんてしたくもないけど……」


数少ない兄弟との交流の場になってる。

愛情に背いた両親とは、今もずっと顔を合わせていないままだ。



いつかは雪解け水のように、お互いの氷も解け合う日が来ると思う。

その時はきっと、保さんと2人で迎えてやろう。



「保さん、それに間に合うように迎えに来て」


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