未熟女でも大人になっていいですか?
事ある毎に通い続けたある年の夏、菩提寺の本堂へと向かう途中で、黙々と壁を塗る男性の姿を見つけた。



(保さんっ!)


走り寄って別人だと分かる。



(……そうよね。生きてる訳がない…)


思い直して声をかけた。



「……いい手つきね」


掛けながら胸がときめく。



「はっ?」


振り返った男が胡散臭そうな顔をする。


「貴方、左官さん?お若いのに壁塗りが上手ね」


勿論、保さんには敵わないけど。


「どうも」


返事もなってないか。


「うちにも嫁に行かない娘が1人いるんだけど貴方は独身?」


「そうです」


邪魔すんなよ…って顔したわね、今。



「ねぇ、良かったら、うちの娘と一緒になってくれない?貴方なかなかのイケメンだし、うちの娘と並んだらきっとお似合いよ!」


ひくっ…と頬を引きつらせて笑う。


「すいません、俺、彼女いるんで」


あっさり拒否された。


「そっかぁ。残念だわぁ」


そう言いながら笑い返し、その場に立ち尽くしたまま、彼の背中ばかりを見つめる。





「ーーーー保さん」


「ん?」



ゲッ!って顔を見せて若い左官工が向き直る。

クスッと笑って歩きだす。



藤にも、この人のような相手が欲しい。

私達と同じように人生を共に歩ける相手と早く出会って欲しい……。



ーーーーーーーーー

半年以上が過ぎ、知らないうちに結ばれた縁の糸を手繰り寄せ、あの人が家へとやって来た。



『こんにちは、初めまして。高島組です』



『たかとうぐみ……?』




物語は始まりを迎え、愛する人の居場所へと


私は旅立っていったーーーー。





Fin

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