未熟女でも大人になっていいですか？
「………ちょうど１０年前なの。私が襲われそうになった日………」


目線を落として答えた。

食欲が失せる。

あの往復ハガキを読んだ後からムカムカとした吐き気が続いていた。


「今日案内がきた卒業生達は、あの後に副担任を任されたクラスの子で……皆、私のことを『教師ロボット』と呼んでいたの………」



忘れもしない、暗黒だった日々。

職員室の中でも教室の中でも、気を張り詰めて生活していた。


「生徒の目も他の先生方の目も怖かった。顔を上げることができなくて、俯いてばかりいた…」


「……お前、そんなんでよく授業ができたな」


素朴な疑問が湧くのも分かる。

我ながら本当にそう思う。


「どうやって授業を進めていたのかも思い出せない。ただ、ひたすら時間が早く過ぎるのを待っていた」


生徒を指すこともできなかった様な気がする。

質問して答えさせる。

その一問一答ですら恐ろしかった。



「ずっと笑えなくて、だからと言って泣くこともできなかった。気が病んででも学校は休めない。休んだら母に心配をかける。それだけはしたくなかったから……」


無理矢理に朝食をお腹に詰め込んで出勤。

お昼は食べずに授業をして、夕飯を家で食べる。


１日２食の生活を長い間続けた。

体重は落ちていたと思うけれど、それについて母から何かを言われることはなかった。



「何かがあったとお母さんは分かっていたと思う。でも、何も聞かれたことはない……」


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