未熟女でも大人になっていいですか?
今となったらそれは有難い。

でも、当時はそれが一番苦しかった気がする。



「カツラのお母さん、お前を信じてたんだな」


高島の言葉に目線を上げる。

その言葉は正しいと思う。

真っ直ぐな瞳を眺めつつ、目の奥が潤みかけた。



「……うん…きっとそうだと思う……」


ぽとん、と一粒落っこちた。

ぐすっと鼻をグズらせる。



「母は強しだな」


またしても正しいことを言う。


「うん。本当に……」


こんな時ばかりいいこと言うなんてズルい。

私は当時の憤りや堪らない恐怖を抱いて夕飯を作ったというのに。



「それでこんなに肉が真っ黒になった…という訳か」


あーあ…と呆れる。


「す、すみません…」


もうどうでもいいから反省しよう。


「でも、まぁ味はいいぞ。ほら食えよ」


勝手に皿に盛る。


「うん……」


グシュ…と鼻を吸って食べ始める。

さっきまで味のしなかったお肉に、辛めの醤油味が付いてるのが分かった。



「辛い」

「そぉか?旨いぞ」


カッカッ…といつもの様に箸音を立てる。


高島の食べっぷりを見ていると安心する。

誰かと一緒に食卓を囲むことが幸せだと、しみじみ思わせてもらえる。



「望さん……ありがとう……」


「何が?」


「何もかも。全部」


未熟な私を引き受けて、こうして一緒に居てくれる。


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