未熟女でも大人になっていいですか?
「今のカツラはロボットじゃねぇぞ。堪らねぇほどいい女だ」


ぎゅっと腕に力を込めた。

あの時と同じように抱かれてもこの人だけは怖くない。



安心する。


何故か不思議とーー。




「望さん……」



ありがとう。

やっぱりあなたに恋して良かった。

好きになって正解。

本当にそう思う。





夕飯を済ませて流しに立つと、高島は私の代わりに食器を洗ってやると言ってくれた。


「採点早く終わらせろよ。でないと何もできん」


昨日やめようと言った本人は、暫く無理だと言われたのが残念だったようだ。

ブチブチ…と小声で文句を言いながら手早く食器を洗い始める。



「ごめんね。お願いします」


声をかけて部屋に行った。

答案用紙の入ったバッグを机の上に置き、中身を取り出して見つける往復ハガキ。


二つ折りにされた返信用の表に記名する。

そして、欠席の文字を丸で囲んだ。


『私用で参加できませんが、皆様のご健康とご活躍をお祈りしております』



サヨナラ、私の教え子達。

あの暗く長いトンネルの始まりに私は戻りたくないの。


教師ロボットとして生きた5年間。

私には安堵と呼べる場所がなかった。


いつも心の何処かで怯えていた。

やるせない恐怖心から逃げ出すことができずにいた。


あの頃のことは思い出したくない。

今のこの幸せに影を落としてこないで。




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