未熟女でも大人になっていいですか?
1週間の試験期間を終えた土曜日の朝、仏壇を拝んでいると高島が起きてきた。


「……おはよう」


眠そうに大きな欠伸をしている。


「おはよう。あいにくの雨ね」


ポツポツという雨音に耳を澄ませながら返事をすると、慣れたように私の横に座り線香に火を移す。



「南無……」


いつもと同じく2文字だけ唱える。

この人の念仏の唱え方は面白い。

理由を聞いたら自分なりの宗派だと笑った。


「何処かに属するっていう考え方が嫌いなんだ。自由でいたい」


だったら何故私にプロポーズをしたのか?

自由でいたいなら私にもこの家にも縛られなくていいのに。




(やっぱりまだ謎が多いな……)


拝んでいる横顔を見つめる。

それに気づいた高島がニヤッと笑みを浮かべた。


「そんなにイケメンか?」


朝からこんなことばかり言う。


「あーはいはい。少しね」


「ツレねー返事」


「勝手に言っといて」


離れようとすると引っ張られる。

まるで何処にでも絡みつく蔓のような男だ。


「イチャイチャしようぜ。今日は雨で仕事も休みだから」


「残念ながらできません。これから掃除して洗濯して買い物に行って……」


「真面目すぎる」


「真面目だけが取り柄です」


「つまらん」


「だったら手伝う?」


「やだ」


「もうっ。望さん勝手が多い!」


「勝手言うな。自由人なだけ」


「自由人ね。上手い言い方」

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