未熟女でも大人になっていいですか？
翼を開く時
「実は葛西のことなんですけど、僕この間、偶然あいつに出会って……」


思いも寄らない名前が出てきて驚いた。

心臓がドキドキと鳴り始め、思わず視線を逸らしてしまった。


「あの２人には話してなかったんだけど、僕、高校時代に葛西が転校した本当の理由を聞いことがあるんです」


ビクッと身構えた。


（立石君があの事を知ってる……？）



恐々と顔を上げた。

目の前にいる青年は、真面目な表情を崩さずに話した。



「あいつ、父親の都合で転校したことになってるけど、本当は違ってて全寮制の高校へ無理矢理入れられたんだそうです」



私も知らなかった事実を教えられた。

何も言えずにいると、立石君は微かに表情を曇らせた。


「『親の管理下に置かれた…』葛西はそう言ってました」


（管理下……）


校長室での親御さんの剣幕を思い返した。

興奮気味に訴え続けるあの眼差しを私はまだ忘れたことがない。




「そう……」


短く言葉を発した。

それ以上の言葉が思いつかず、ぐっと息を呑み込んだ。


「転校してからも時々、葛西とはメールのやり取りをしていて、そこであいつは先生のことを聞いてきたりもしました」


ビクッと内心怯える。

それを表情に出すまいと必死で堪えた。


「僕が先生の態度が変わったと教えてしまったからだと思います。すごく気にしていて…心配していました」


自分の起こした行動のせいだと自覚していた筈だ。

気にしていたのもきっとそのせいだ。


< 41 / 208 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop