未熟女でも大人になっていいですか?
「葛西に『先生はイケメンの男性と暮らして幸せそうだった』と教えてもいいですか?『笑顔もあの頃と変わらなかった』と、伝えてやりたいんです」


真っ直ぐな視線を見返した。

友達思いのところが今も昔も変わらない。


聞きたいことを聞かずに済まそうとしている。

立石君には、昔からそういうところがある。



「……うん。葛西君に私のことを話して。『今、幸せを感じて生きている。だから、君も人生を大事に歩んで行って欲しい』と」



いつまでも傷に触れられる度にビクついたりオドオドしていたらいけない。


傷口からの出血はもう既に止まっている。


これからは翼を思いきり広げて羽ばたいていこう。


彼と同じ様に、私も新しい人生を共にする相手を見つけたのだから。




「教えてくれてありがとう」


そう言うと、立石君は嬉しそうな笑顔を見せて会釈をした。

くるりと背中を向け、急いで走り去って行く。



私の教師生活一期生の教え子達。

もしも、次にまた同窓会を開くことがあったなら、今度こそ本当の意味で笑って参加しよう。



今日からまた、新鮮な気持ちで生きよう。

今、後ろにいる男とーーー。





「…お待たせ。買い物に行きましょうか」


笑いながら振り向いた。

廊下の端に立っていた高島は勢いよく飛び降りてきて、ぎゅっと私にしがみ付いた。


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