未熟女でも大人になっていいですか?
心の重荷から解き放たれた私の思考は自由だった。


これからは高島と2人、先のことだけを考えて生きればいい。


幸せになってもいいんだ…と、やっと思えるようになった。




「望さん」


「何だ」


「今夜、私を蹴飛ばさないでね」


「そんなことするか。俺は寝相はいい方だ」


「本当?信じて大丈夫?」


「任せろ」


彼の『任せろ』なら信じられる。

その言葉にほくそ笑み、静かな夕食を済ませた。



夕食の片付けをしている間、高島は師匠と呼んでいる人に連絡を取り、住んでいる場所の近くにあるホテルを予約したと教えてくれた。



「『ツインしますか、ダブルにされますか』と聞かれたから『勿論ダブルで』と言ったら笑われた」


予約中のことを話して聞かせる。

笑いながら受け止めたけれど、心中はドギマギと狼狽える。


男と2人でホテルに泊まるのは初めて。

行為そのものも初めてなら宿泊すらもしたことはない。



(本当に子供と同じだな……)



ガックリしつつ入浴を済ませると、お風呂場の外で待ち構えていた高島に腕を捕まれた。



「捕獲」


「私は珍獣か何か?」


「稀に見る希少生物だろう」


36歳にもなって処女。

確かに希少価値かもしれない。



「ははは。上手いこと言う」


笑いながら同じ部屋で眠った。


高島の心音を聞きながら眠った夜は、まるで幼い頃のように深く、どこまでも幸せな気分が続いた……。




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