未熟女でも大人になっていいですか?
「こんな感じで旅行?楽しめるのかしら」


呟きながら落ち込む。

音無さんに言われるまでもなく、悩みはいろいろと尽きない。

初めてのことが重なり過ぎて、どうにも落ち着かなくて仕方ない。


「あーもう、だから何処でもいいと言ったのに」


恨み言の様な言葉を吐いてしまった。

高島は、ただ私を大事にしたいと思っているだけのことなのに。


「バカバカ。私も望さんもダメ出しばかりで嫌になる!」



ムシャクシャしたまま日が過ぎていく。


そして、ようやく金曜の夜が訪れた。




「明日は早く出るぞ。師匠がいる場所は海の向こうらしいから」


「海外なの!?」


夕飯を食べながら驚いた。


「アホか。海は海でも国内だ。今、九州に住んでるらしい」


「九州」


「遷宮?とかいうので神社の移転に携わってるそうなんだ」


「遷宮って、この間からテレビで聞かれる大規模な神殿移動のことよね。望さんの師匠さんってそんなことに携わってるの?」


「あの人は仕事のある所なら何処へでも行く人なんだ。場所を変え、土地を変えて生きる。自分のことを『風来坊』だと笑ってたな」


「風来坊?」


あまりいい表現ではないように思えた。

でも、高島はそんな人を尊敬している。


「会えばどんな人か分かる。だから敢えて説明はしない」


ビールを飲まない高島を久しぶりに見ていた。

早朝から運転をする気らしく、今夜は飲まないでおくと言った。


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