未熟女でも大人になっていいですか?
「ご両親にはいつ会いに行くの?」


そっちも説明なしのままだ。

高島は少しだけ表情を歪め、間を空けてから話した。


「師匠に会った帰りにでも寄るつもりでいる。親にも言ってる。だから気にするな」


「気にするなって言われても、手土産とかの問題もあるし」


「あー、そういうの一切不要だから」


「で、でも、そんな訳にはいかないでしょう?私は初めてお会いするのに…」


思わず食い下がってしまった。

面倒くさい奴だな…と呟く声が耳に入る。


「望さん、私はね!」


「もういいから黙って食えよ!メシがマズくなる!」


私の声を上回る大きさの声で怒鳴り返される。


気まずい雰囲気の食卓になるのは何度目?

高島にとって、両親の話はそんなにしてはいけないことなのか。





(お母さん、どう思う?)


高島がお風呂に入っているうちに仏壇の前に座って問いかけた。

穏やかに微笑んでいる母は、勿論何も言わない。



(私……望さんが時々よく分からないの……)



どうしてあんなにもご両親の話を拒むのか。

専門学校を中退した時、彼と両親との間にどんなやり取りがなされたのか。


どんな原因があって家を出てしまったのか。

彼も両親もお互いに心配などしていないのか。



(お母さん達には熱心に手を合わせてくれるのにね……)


優しい人なんだと分かる瞬間がある。

だからこそ、根深いものがあるのかもしれないとも思う。

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