未熟女でも大人になっていいですか?
明朝、廊下を歩く足音で目が覚めた。


「ん……何時……?」


枕元に置いている時計に手を伸ばす。



(4時半?望さんもう起きたの……?)


半分以上寝惚けた頭で考える。

ガタガタと扉の開く音がして嫌でも目が覚めてしまう。


(望さんってば、何しているんだろう……)


仕方なく起き上がった。

フラフラする体を揺らしながらドアへと近づく。



「望さん?おはよう……」


声を出しながら目を疑う。


誰!?

何!?

望さんよね!?


「おーカツラ、いいとこに起きてきた!」


来い来いと手招く。

ポカン…としたまま、洗面所にいる彼のところまで歩いた。



「こいつ結んでくれよ」


首元の紐を指差す。


「滅多としねぇからやり方忘れて困ってたんだ」


瞬きを繰り返して見つめる。



「……ねぇ、どうしてネクタイなんてしているの?」


しかも見たことのないスーツ姿だし。


「旅行に出かけるのにスーツ着る必要ないんじゃない?」


スッキリしない頭で尋ねた。

高島は「必要性は大いにあるんだ」と話し、「早く手伝え」と急かせた。


「結び方よく知らないんだけど……」


ブツブツ言いながらも日頃の見よう見まねで巻いてみる。

何とか形よく納まってホッと一息ついた。


「俺、寺行って車取ってくる。カツラも出かける準備しとけよ!」

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