未熟女でも大人になっていいですか?
翌朝、起きてみるとカツラは仏壇の前に座ってた。


「おはよう。早いな」


朝5時半。

俺は殆ど眠れなくて、仕方なく起きだしたところ。


「望さんこそ、早いですね」


おはよう…と笑い返された。

カツラの笑顔は綺麗だ。

唇の端がきゅっと上がり、なんとも言えない愛らしさがある。


「俺も一緒に拝むよ」


カツラの両親に報告しておかないといけない。


隣に座って線香に火を移す。

親戚でもあるおっさんの寺に世話になり始めた頃、それも修行だと言われた。



『なかなか火が移らんからと言って、不平や不満を言ってはならん。仏様はそんな自分を見ておられる』


厄介なもんだ…と思った。

でも、そう言われると、とにかく無の境地を目指す。




「南無……」


それ以上の念仏を唱えないのにも訳がある。

『南無』は信じるという意味。

それ以下は宗派によって違うと教えられた。



(昨日はカツラを頂き損ねました…)


報告することでもねぇけど話す。

笑ってる2人の顔が楽しそうに見えるのは、俺の中に若干の悔しさが残ってるせいだ。


(でも、プロポーズはしましたから、ご安心を)


写真の表情が変わって見えるのは、自分の気持ちに変化があるから。

笑い顔が少しだけ落ち着いた様に見えるのも、俺の中にきちんとした覚悟が生まれたせい。



「今日は熱心ね」
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