未熟女でも大人になっていいですか?


きゅん……と、生まれて初めてのような胸の鼓動を聞いた。


あの日、軽トラックの荷台で虚ろな目をしていたアオムシはもう何処にも見られない。


私の前には柔らかい表情を浮かべた男性がいる。


胸のうちに狼を隠し持ったまま何日も味見を我慢していた人だ。



「似合うぞ」


「望さんもね」


お互いに誉め合って笑った。

車に乗り込みながら、ちらりと我が家を見返す。


藤色に壁が塗装されたあの日から、私の人生は大きく生まれ変わった。


塗り替えられたのは家の壁だけではないと思う。


高島は私の人生の色も鮮やかに塗り替えてくれたのだ。




「望さん、ありがとう」


「何のことだ?」


「何もかも。全部!」



声を出して笑えた。

きっとあの日から私は変わり始めたんだ。



「変な奴だな……まぁいい。行くぞ」


エンジンをかけて走り出す。


内心狼の高島とまだまた未熟女の私。

長い一日はこうして始まった。




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