未熟女でも大人になっていいですか?
「分かった分かった」


高島は煩そうに答え、「下道を通る時だけ頼む」と付け足した。


「うん、本当よ!」


約束を取り付けて外へ出る。

土産物屋の前に敷かれた砂利道を歩き、本殿を目指した。



大きな御影石作りの鳥居の下を潜り抜け、水洗い場で手と口を清めて階段を上がる。

九州でも一番と言われる神社には多くの参拝者が訪れていた。


伸び始めたばかりの紅葉や楓の葉が小さな影を段の上に落としている。

背の高い杉林の間から洩れてくる光は、まるでそこだけが別世界のようだと語っている。


神聖な空気が漂い広がる。

その中で私は大きく深呼吸を繰り返した。



「…広い神社ね…」


息を弾ませながら石段を上がり続ける。


「こんな広い神社内で師匠さんを探すのは大変なんじゃない?」


細かい呼吸を繰り返しながら話す私を見て、高島は「少しだけ休もう」と立ち止まった。



「カツラは喋り過ぎだ。こういう場所ではあまり喋らない方がいい」


らしからぬことを言う。



(……この人、本当に望さんよね!?)


我ながら耳を疑う。

いくら師匠に会うからと言って、スーツの次はお喋りまで禁止とは。


(狐か狸に化かされている訳ではないのよね?)


森林の中だけにそんな思いまで発する。

ある筈がないと納得しながら最後の段を上りきった。


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