未熟女でも大人になっていいですか?
「当然よ。午前中は私が寝かせてもらったんだもん」


緊張する中で運転させてごめんね…と謝った。

気を良くした高島から部屋に入って直ぐ、「何か飲もう」と誘われたのが今だ。



……2人で静かにお茶を飲んだ。

空かした窓の隙間から微かに水鳥達の声が聞こえてくる。


煎茶を飲めば少しは落ち着くかなと思って選択したけれど、耳障りのような心音はどんどん速さを増していくばかり。

夜が来なくても心臓が張り裂けそうだというのもどうかと思うが、やはりどうしてもソワソワする。

向かい側でのんびりとパンフレットを読んでいる男は落ち着き払っている。


私の知らなかった青年時代の高島は、女性を取っ替え引っ替えしながら生きていた。

神社で話しかけていた「家賃の要らない生活」とはつまり、その女性達の家に転がり込んでいたと言うことだろうか。


どれくらいの期間、そんな生活を送っていたのだろう。

そして、何人と関係を持ったのだろうか。



(そんなこと詮索してどうするのよ。40歳近くまで独身でいたのだから、それなりに経験がないとおかしいでしょう)



我ながら下らないことを考えて自答した。

何も話そうとしない私に気づいて、高島の方から口を開いた。



「運転で疲れたのか?露天風呂にも入って来ればいい」


パンフレットに載っている写真を見せられた。

海が一望できる露天風呂は、屋上にあると記されている。


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