未熟女でも大人になっていいですか?
パタパタ…と足音を立ててユニットバスへ籠った。

開けられない様に内側から鍵をかけ、外の様子を伺う。



深い吐息が聞こえる。

カシャンと金属音がして、スーツをハンガーに掛けたのだと分かる。

バサバサという衣摺れの音が響いたかと思うと、コン!と軽くノックされた。



「先に行くからな。カードキー持って出ろよ」


「うん…分かった…」


答えた後、高島が部屋を出て行くまでの間が空いた。

どうやらへそ曲がりの私が出てくるのを、少しだけ待ってくれていたようだ。


静かにドアが閉まる音を聞いて,ズルズルと扉を背に座り込んだ。

こんな気持ちで高島に抱かれるのは嫌だ。

どんなに詮索してもいいとは言われたけれど、すればする程自信が無くなっていくのはどうしてか。


神社で出会った彼の師匠は、私が他の女達とは違うんだと言っていた。

「浮気心を起こすなよ」と、念押しまでして諭した。


それに答える高島の目は真剣だった。

数ある女性の中から私を選んでくれたのも嬉しい。



(なのに、何故こんなに不安なんだろう。抱かれることだけじゃない。望さんの気持ち自体が不安……)



自分の気持ちの持ち方一つだと思うのに、高島のせいだと思おうとした。

燻り続ける女性達との過去を胸に抱いたまま、露天風呂で汗を流して部屋に戻った。



高島は既に部屋に帰っていた。

ゆったりと着崩された浴衣姿に見惚れ、要らない心配が増していく。


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