未熟女でも大人になっていいですか?
「いい湯だったな」


髪の毛の先から雫が垂れる。

たったそれだけのことで、どうしても目が向けられない。



「うん…」


バスタオルを握りしめたままぎゅっと肩に力を入れた。

近寄ってくる気配が怖くて、何気なく後ろへ下がった。




「逃げるな」



「逃げてなんかない」


そう言いながらも掴まれる腕が震える。

ドクドク…と鳴り響く鼓動が速すぎて、どうにかなってしまいそう。



「浴衣も似合うぞ」


褒めてくれるのは嬉しい。

なのに、胸は熱くなるばかりで………




「カツラ?」



「…あっ、ごめん……」



涙が止めどなく溢れ出した。

情けない自分が表に出てきて、どうしようもなく惨め気分になってしまった。


「何で泣くんだよ」


変な奴だなと呆れられる。


「ごめん、なさい……」



止まらない。

こんな思いを抱いたままで抱かれるなんて、絶対に無理だ。



「緊張すんなって」


してなどいない。

むしろ、本当は早く抱かれたい気もしている。

けれど………


擦り寄ってくる高島を突っ撥ねた。

腕に力を込めている私を見つめ、高島の腕が緩む。



「お子様だなぁ」


呆れられるし。


「ほっといて」


もう訳が分からない。


高島の側を離れてしまった。

さっき神社を後にする時は、決して腕を離さないと決めたのに。


< 81 / 208 >

この作品をシェア

pagetop