悪戯な唇

「えぇ、どこまでもボールを追いかけますよ」


わざとらしいセリフを吐く篠川さんに、憎たらしく嫌味を返す。


この完全武装は誰のせいよ…


ジャージズボンに膝あてをするなんて、格好悪いったら…


口角を上げ笑みを浮かべた男を睨み、ぼやきながらも試合が始まった。


バトミントンのダブルコートをフルに使って熱戦が繰り広げられる。


私達チームは難なく勝ち進み、決勝進出。


両チーム1セットずつとって、3セット目は長いラリーが何度も繰り返された。


後、1点で私達の勝ち。


このボールを落としてなるものか…


意地で手を伸ばしスライディングすれば、ボールが上がった。


それをスパイクして決めたのは篠川さんだった。


やった…勝ったよ。


床に這いつくばったままの私に、手を差し伸べてくる男。


「ナイス、ガッツ」


ムカついていたことも吹っ飛んで、ハイタッチ。


彼の手を借り立ち上がると熱さに上着を脱いで手のひらで扇いでいた。


突然、不機嫌に


「熱くても着てろ」


なんだ?


手に持つ上着を奪い、私の肩にかけて耳元で囁く男。


『見えるぞ』


何がだ?
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