悪戯な唇
「……どうしてよ……なんでこんなことするの……キスしたりするの」
黙って聞いている男の目は、
まるで責めているようで、悲しくなる。
キスしてくる意味もわからなくて……
なぜだか、泣いていた。
泣いている私に驚いた男は、顔を上げ頬を伝う涙を生暖かい舌先で舐めとっていく。
「……泣くなよ」
泣かせたのは誰よ……
「なぁ……泣かないでくれよ」
困惑気味の男は私の体を抱き寄せ、背中と頭を撫でている。
「なん…なの……私、あなたのなんなの?」
「……」
答えられない男に苛立ち、肩を押して離れようと暴れていた。
「もう、いや……私にキスしてこないで…(好きでもないなら構わないでよ)」
離れない男の胸で泣き叫ぶ。
「無理だ」
「なに、勝手なことを言ってるの⁈」
顔を上げ睨みつけても…
「勝手でいい……俺以外の奴とキスさせない」
あっという間に唇は塞がれ、角度を変えて深くなっていくキス。
男の腕の中であらがうのに、ぎゅっと力が強まりあらがうこともさせてくれない。
私の唇がキスしたくなる唇だからなのか?
それとも独占欲からくるものか?