悪戯な唇
同僚としてしか認識していないし、彼のことをなんとも思っていない私には解せない。
仕事中、私語を慎むのは当たり前だし、
真剣に仕事に取り組んでいるのに、笑みを浮かべるのもおかしな話で…
周りにいる男性も彼と同じように仕事をしていると思うが、何が違う?
彼が、デブでブサ面なら違う感情が芽生えるだろうに、イケメンというだけでもてはやされる。
本人が、それを聞いて喜んでいるなら別に構わないが…
難儀な…
私が彼に持つ感情はかわいそうな人だ。
その彼が、どうしたんだろう?
「なんですか?」
「山根の唇ってキスしたくなる唇No.1なんだよな…」
はあ〜?
何を言ってるんだ…この酔っ払い。
あなたのクールな印象はどこへ…
酔っ払い相手にムキになっても面倒だ。
「…どうも」
「なぁ…キスしていいか?」
は…い?
その瞬間、唇を奪われてしまった。
チュッと弾力を確認し、下唇を喰む男の唇に抵抗する間もなく離れていく。
唇に残った甘い疼きがキスされたのだという証拠だった。
なんなんだ⁈
「何度でもキスしたくなる唇だ」