悪戯な唇
結局、欲しい言葉はもらえないまま、キスでごまかされてしまったけど、彼の命令口調に嬉しいと思ってしまう。
胸の谷間に赤く残されたキスマークも嬉しくて、家の鏡でずっとニヤついて、あの言葉もこの痕も所有欲のように思えてしまう。
それからというものあの男は、彼以外の男性と話していたところを見ただけで、嫉妬するかのように場所を選ばずにキスしてくるようになった。
最初は、祝勝会があった翌週の月曜日のことだった。
たまたま、朝、ロビーで決勝相手のチームにいた男性と一緒になり、お互いの働きを労っていた時だ…
「山根さんの反応、速かったね。何のスポーツしてたの?」
「…バレー部に所属してたんです」
「なるほどね…来年は山根さんにボールを集めさせたらダメだってことか‼︎ 次は、負けないよ」
「来年もうちの勝ちですよ」
ただ、これだけの内容だったのに、この光景を見ていたらしい彼は私をわざわざ呼んだ。
「山根さん…例の件どうなってる?」
例の件?
「資料室を探してきてよ」
訳のわからないまま資料室へ
背後から来た男に、棚に押しつけたられて噛みつくようにキスをされたのだ。