悪戯な唇

そんなわけないでしょう


男をジロッと睨む。


どうして、そんなことを思うのか悲しくなる。


「……もう、イヤ。私が軽い女だって言いたいの⁈そう思いたいなら思えばいい。……あなたなんて嫌いよ。私に触らないで…離れてよ」


男の胸を押し、離れようと暴れる。


ぐっと肩を押さえられ、唇をまた重ねてくるから唇を噛んでやった。


痛みに顔を歪めるも、離れない唇。


頭を抱え込まれ、唇の上を撫でる男の唇、時折、舌先が唇の輪かくに沿って撫でていき甘くなっていくキスは、たまらなく気持ちいい。


唇が離れてもキスの余韻に浸ってしまう。


キス1つで、私の怒りを鎮めてしまうなんてずるい。


悔しくて


下唇を噛み、上目遣いに睨んでいた。


「……この唇にキスできるのは俺だけだ」


噛んでいる下唇を男の指が剥がしていく。


「そのさきも…俺だけのものにしたいって言ったらお前はどうする?」


ずるい聞き方…


好きとも嫌いとも言わずに


あなたは何を求めているの?


心を見せてくれない人とその先に進んで
何の意味があるのかわからない。


「私は、キス以上のことは恋人じゃない人とはしないわ」
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