悪戯な唇
もう、これは駆け引きだ。
どちらが先に相手の心を引き出せるか探り合う。
見つめ合うしばしの時間
目を細め、片方の口角を上げて意味深に薄く笑った男。
「恋人じゃない奴とキスはするんだ⁈」
冷たい口調で、小馬鹿にした笑いを浮かべていた。
しまった…
まるで、エッチは恋人じゃないとできないが、キスなら誰とでもできる軽い女だと彼はとらえてしまったらしい。
私は、ただ…
この曖昧な関係をはっきりさせたかっただけなのに…
言葉って難しい…
とらえ方が違うと誤解を招くことになる。
ただの触れるだけのキスならできるかもしれない。
だけど、恋人のように甘くて欲情するような情熱的なキスは誰とでもできるわけがない。
そこに、何らかの感情がないと…
「あなたこそ……誰にでもキスしてるんじゃないの?あなたがいう…キスしたくなる唇をした女性が目の前にいたら…私じゃなくてもかまわないってことよね」
売り言葉に買い言葉だ…
まるで、求められたら誰とでもキスをする女みたいに言うなんて、ひどい。
あんなキスをしておきながら、私のほしい言葉もなく責める言い方にムカついていた。