悪戯な唇
突然
バンと棚を叩く音にビクッと体が驚く。
「お前こそどうなんだ?なぜ俺とキスしてるんだ?……わかんねーよ。俺は…この唇が他の女だったらキスなんてしない」
お前だからだよ…
最後にせつない声と触れるだけのキスを残して彼は資料室を出て行った。
後に残された私
彼の最後の言葉がループする。
言葉の意味を何度さぐっても、出る答えは…ただ1つ。
私だからキスするの?
それって……
頭に浮かぶ言葉を口に出せないまま、頬だけが熱くなる。
その日から数日経ったある日
「14時から第1会議室で先方と打ち合わせするからお茶出しお願い」
「はい」
打ち合わせが始まる前に給湯室でお茶の準備をしていると彼が入ってきた。
自分の唇の上に人差し指を立て『しっ‥』と口を動かし近寄ってくる。
ドキドキする気持ちを隠しシンクに背をついて彼と向き合えば、彼はシンクに両手をついて私を囲い顔を近づけてきた。
無意識に目を閉じて受け入れる体制をとった時
「最近、山根さん色っぽいくないか?」
「あぁ、あのぷるっとした唇が目の前にあるとむしゃぶりつきたくなる」