悪戯な唇

「食事か…それなら、美羽の手料理が食べたい」


まわりからの痛い視線と好奇の視線


もう、空気を読んで…と
心の底で叫んでいた。


聞いてない素振りで、聞き耳をたてている人達の中での会話は気まずい。


「……ここを出てから考えましょう」


「そうだな…」


納得してくれたと思ったのに…


「美羽の得意料理ってなに?」


……彼の中では、私がご飯を作ることが決定事項のようだ。


「……特にないですよ」


エレベーターの階ボタンを見つめ早く着いてと必死に願いながら彼に返事をした。


それが気に入らなかった様子の彼は、不貞腐れて、わざと私の頭部を小突く。


「和食、中華、イタリアンぐらいの中に何か1つぐらいあるだろう?」


もう、しつこい…


男の人って肉じゃがって言えば、喜ぶの?


絶対、私が何んて答えるのかまわりにいる人達は聞き耳をたてて待っているはず…


考えた末に


「篠川さんは何が食べたいんですか?」


「そうきたか?」


「俺は…」


彼が答えようとした時、エレベーターは下に到着し、ドアが開いていく。


まわりの人達は、私達を避けてエレベーターの外へ
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