悪戯な唇
私達以外誰もいなくなったエレベーターのドアが閉まる。
突然、ぎゅっと抱きしめられて
頭部から甘い声で囁く男
「美羽が食べたい…キスだけじゃ終わらせないからな」
頭部にチュッとリップ音をたてて離れた男が、エレベーターの開を押せばドアが開いていく。その様子を逆上せた顔をして見ていた。
予想もしてない不意打ちのセリフに、真っ赤になった顔のまま動けない私。
彼は、クスリと笑い私の手をとり外へ出て行く。
誰にも聞かれてないのが救いだけど…熱くなった顔はなかなかひいてはくれない。
彼の言葉は、本気なのか冗談なのかわからないから、タチが悪い。
心臓がドキドキして何も考えられない。
恋愛経験が乏しい私は、どう受け答えしていいのかわからないまま彼の背を見つめ後をついていく。
「俺ん家でいいよな⁈」
「……さっきの言葉は本気ですか?」
「何が?」
わかっているくせに意地悪い顔をして聞き返す男。
「……だから、その……手料理を食べたいっていうことじゃなく、キス以上の…ことを……」
「どっちも食べたいんだけど…ダメ⁈」
急に、甘えた顔をして振り向く彼にキュンとハートを持っていかれた。