悪戯な唇

キスして…


キスしてきた唇が離れ、鞄と買い物をしてきた荷物が落ちた音がすると、私の頭を撫でる手と腰をグッと引き引き寄せる男の手に体が前に揺れる。


男の胸に飛び込むように顔を埋めてしまい、胸に手を添えて顔を離そうとするのに後頭部へと回された手のひらがそれを許してくれなかった。


頭部に落とされるチュッと鳴る軽いキスと腰にあった男の手が背をいたずらに撫ぞり私の反応を伺う。


ピクッと反応して小刻みに揺れる体を見て気を良くした男が鼻先で笑った。


「いい反応」


嬉しそうな声が頭上から聞こえてきて、ムッと口を尖らせ彼を見上げた。


「頬を染めてそんな顔してもかわいいだけだ」


尖った唇にチュッとキスをして笑っている彼に反撃する。


彼の首にしがみついて目を見つめて初めて彼の名前を呼んだ。


「…わたる…すきよ」


ボッと顔を真っ赤にして首まで赤くなっている彼は、顔を隠すように大きな掌で口元を覆い、視線を外して嬉しさを噛み締めている様子が伺えた。


やったわ…


ちょっとした仕返しに満足して、顔がにやけてしまう。


「どうしたの?」


わからないふりをして彼の顔を覗いた。
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