悪戯な唇
「……っ、今のは効いたわ。もう飯はいらないな⁈」
えっ…
意地悪く笑った男は、床に落ちた荷物を拾い玄関横にあるキッチンへと入って行く。
玄関先に置いてけぼりの私は、彼の言葉の意味の訳を理解するまで時間がかかっている。
ガサガサとするビニール袋の音、バタンと冷蔵庫を閉じる音がすると直ぐに彼が目の前にやってきていた。
「入れば…」
彼の言葉にうんと頷き、彼に背を向けてシューズボックスの棚につかまりヒールを片足脱いでいる側から、待ちきれないと言わんばかりに膝裏に彼の腕が入り私を抱きかかえてくる。
えっ…えーーー
「このままベットまで運んでやるからつかまれ」
落とされないように彼の首にしがみけば、大股でベットまで直行。
そっと、寝かせるように降ろされたのに揺れるスプリングの上で身動きできない。
彼が私の腰にまたがり、押さえつけているからだった。
「美羽…好きってもう一度言って…」
ネクタイを緩める仕草は、私の視線を捉えて離さない。
ネクタイを外した手が私の頬に手を添え、唇に指先が触れて促してくる。
形成逆転
彼の妖艶な眼差しにあらがえない。