悪戯な唇

視線の先に資料の束を拾う男のゴツゴツとした厚みがある手が現れ目を奪われているうちに資料が全部拾われていた。


スッと差し出される資料


一呼吸して気持ちを落ち着かせてから、受け取ろうと資料をつかんだその手首を握られた。


なに?


その瞬間


デスクの同列に誰もいないことをいいことに、男の唇が頬にキスを落としていった。


まわりはデスク下での出来事に、誰も気づいてもいない。


あの時も、みんなお酒と余興に夢中で私達が数10分消えていたことに誰も気づいていなかった。


(なに…するんですか?)


声をたてそうになる唇を、男の人差し指の指先が触れ閉ざす。


その指先が離れて、その手のひらがキスした頬から顎を撫でていき、顎をぐいっとあげ唇がかすめていった。


唇に少しだけ移ったグロスを親指の腹で拭い、妖しく笑みを浮かべて男は、また、普段どおりに仕事を再開し始めた。


ガクンとお尻がついてしまい、立ち上がれない私…デスクに手を伸ばして何かの支えなしに立てないほど体が驚いている。


なんとか、イスに腰掛けた私の目の前のパソコン画面にメールの新着が…


クリックしたら


[お昼休みに第3会議室]とだけ
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