悪戯な唇
チラッと隣を見れば、一瞬だけこちらを見て笑ったような気がした。
私をからかってるの?
彼はいったい何がしたいのだろう?
見なかったことにしようと削除して、仕事にもどるけど…まったくはかどらなかった。
触れたか触れないぐらいだったのに、唇がじんじんと疼いて男の唇が触れたなごり唇に残っている。
あの日のキスを思い出し、物足りなさに唇の輪郭に沿って指先が無意識に触ってしまう。
うっとりと目を閉じれば男とのキスが蘇り、頭の中まで蕩けそうになると、我に返り誰にも見られてないか辺りを見回してホッとするの繰り返し…
欲求不満かと頬を染め反省して仕事を再開する。
お昼休みになり、スタッフは各々に休憩に入っていく。
隣の男が立った気配にビクッと反応してしまう体。
ドキドキして、気配を伺う。
部屋からいなくなった瞬間、体の力が抜けドッとデスクにうつ伏せていた。
あー、もう…こんなんじゃ、身がもたないよ。
「美羽…あんた何してるの?」
私を呼ぶ仲のいい同僚、佐伯 梨花が声をかけてきた。
「…あっ、ちょっと疲れたなぁと寝てた」
「寝てたって…ランチいかないの?」