双子

双子


ずっと昔、とても仲のいい姉妹(きょうだい)が住んでいた。

姉妹は双子だった。

何をするにも必ず一緒だった。

姉が怪我をしたと聞けば、妹も姉と同じ場所に傷をつけ、妹が怪我をしたと聞けば姉も同じ場所に傷をつける。

そんなある日の事。

事件は起きた。

姉は、好きな人ができた。そんな姉に嫉妬した妹は、姉の事が許せなくて…。

姉がデートする日の夕方だった。

姉が彼氏から離れた隙に、姉になりすまし、彼氏に近づいた。

彼氏は当然、姉が妹だとは気づいていない。

やがて、姉が目にした光景が…。

妹と彼氏がキスをした瞬間だった。

「嘘…」

怒りを覚えた姉。

家に帰り、部屋へ戻ると、何も知らないような顔をした妹がいた。

「どうゆうつもり…?何でアンタが…私の彼氏とキスしてたのよ…」

怒りで震える声。

「何が?アタシが何をしたって言うのよ?」

不敵な笑みを浮かべる妹。

「何よ…。アンタの顔なんてこうしてやるっ!」

近くにあったアイロンで妹の頬に押し付ける。

「ギャアーッ。熱い。痛いっ。」

「鏡を見て見なさいよ。自分の顔。これでアンタと私の見分けがつくわね」

狂ったような笑い声。

妹も負けずに、アイロンを姉の頬に押し当てる。

「あーっ!痛い、熱いっ!」

「これでアンタも私と同じね。見分けなんてつかないんだよ」

「なら、これでどうだっ!」

姉は鋏(はさみ)で妹を刺した。

「アンタなんて大嫌いよ。いっつも私のまねばかりしてさー」

妹は、刺さった鋏を抜き、姉を刺した。

「そんなの…お互い様よ…」

「死ね!アンタなんか死ねっ!死んでしまえーっ!」

ちからを振り絞り、刺し続ける姉。

それでも、やられっぱなしでたまるかと姉を指し続ける妹。

そして…。

鏡に映った哀れな自分たちの哀れな姿。
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