ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜
「星野センパイ」

「染谷さん」

更衣室から廊下にぴょこぴょこと飛び跳ねるように出てきたのは、一個下の後輩、染谷しおりさんだ。

わたしよりも背が低く、栗色のふわふわとしたパーマをあて、地味に仕上げているつもりでもピンクのリップのおかげで少し際立つ。

黒いリボンでハーフアップしていて、手持ちのピンクのかばんのおかげか女子力の高さが目立ち、まぶしいくらいだ。

若い子だからと気を抜いて仕事をしているのかと思いきや、効率的な仕事の仕方をしてくれる。

わたしだけじゃなくて、先輩方の指導のもとで彼女は成長しているみたいだが、仕事もできてかわいらしい仕草に男性社員に人気があるだけある。

ぴょこぴょことわたしの隣に擦り寄るように歩きながら、顔をあげて目をキラキラさせている。

「どうやら4月から新しい課長が赴任するそうですよ」

「そうなんだ。課長、別の課に異動になるんだね」

「財務課の課長の異動でだそうですよ。ちなみに新しい課長は東京支社からだそうです」

「どうせおじさんでしょ。課長っていったらてっぺんがこうテカテカしちゃって油ぎってて」

「あはは、それ言い過ぎですよー」

おじさんばっかりのこの会社じゃあ、恋愛できっこない。

だから仕事に集中できるからいいんだけど。
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