ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜
「星野さん、おはよう」

「おはようございます。牧田先輩」

わたしよりも4つ年上の牧田先輩はショートカットの黒髪に目鼻立ちが整い、体もシャープで美人といっても過言ではない人だ。

入社当時からの教育係である。

わたしも染谷さんも牧田先輩にいろいろと指導してもらい、仕事の大変さと楽しさを教えてくれた。

厳しいところもあるけれど、面倒見のある姉御のような存在にいつも甘えてしまう。

それでも牧田先輩は快く応じてくれるから大好きだ。

「来期用のマニュアル作成がはじまるね。またよろしくね」

「はい」

3月は年度末ということもあり、新規の工業機械カタログのマニュアル作成がはじまる。

6月末に締め切り、7月の夏の時期に新規カタログが仕上がり、工場内のマニュアルだけでなく、工業機械を使う会社向けに届けられる。

毎年のことだからわかっているけれど、工場からあがってくるのに時間がかかるけれど、こちらにくるのはたいてい締め切りギリギリが多くてタイトなスケジュールの中でカタログの原稿を仕上げなければならなくて大変だった。

「そういえば、4月から新しい課長がくるんですよね」

染谷さんが声を弾ませながら牧田先輩に話しかけた。

「そうね」

いつもなら明るく応対する牧田先輩なのに、急に冷たく感じたのは気のせいだろうか。
< 12 / 170 >

この作品をシェア

pagetop