ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜
暗い顔をして自分の席に戻っては心配されるだけだから、軽く深呼吸をして踊り場から総務課へ戻った。

「メール届いてるみたいよ」

と席につくと牧田先輩に声をかけられた。

急いでメールソフトを開くと、総務課の全員にメールが送られた。

マニュアル作りに関する予定と新たな型式一覧が工場を管轄する生産管理課からのデータがアップされている。

マニュアル作りか。

既存のマニュアルに新規の型式と説明文を入れるだけの単純作業だけど。

恋愛にもマニュアルみたいなものがあればいいのに。

わたしは恋愛したってまた変な顔をされて終わるだけだ。

それでも、ほんのわずかだけれど、納得いく恋愛がしてみたい。

気がつけばため息をもらしていたところ、牧田先輩にみられる。

心配そうに顔をみる牧田先輩にニコッと笑いかけていると、昼休みが終わるぎりぎりになって染谷さんが戻ってきた。

相変わらず時間をかけじっくりと気合いの入ったメイクに会社なんだからそこまでしなくてもいいのにと思いながらも、おじさんたちの視線を感じているのかすました顔をして席に座っていた。

わたしも染谷さんみたいにいろいろと吹っ切れたらいいんだろうけれど、そんなことしたら会社の周りのおじさんたちが一歩引いて愛想笑いを浮かべて接してくるのが容易に想像できる。

遊びにきているわけじゃないんだから、と自分を戒めるように仕事に集中した。
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