ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜
桐島課長らしい文字だな、とくすっと笑っていたところを、染谷さんがわたしの席にやってきた。

「星野センパイ、この型式で直したので確認お願いします」

「うん、わかった」

コピーされた紙をもらうと、染谷さんがにやけた顔をした。

「いいなー。いっつも星野センパイにばっかり話しかけて」

「そうかな?」

「うらやましいなあー」

そういって染谷さんは口を尖らせている。

「仕事で話してるだけだし」

その通り、ただ仕事の会話をしているだけにすぎない。

昼休み以外は。

染谷さんはわたしの顔をみて、顎を上げて下目遣いをした。

「狙っちゃおうかなあ。桐島課長」

「えっ」

一瞬間があった。

別に染谷さんの恋愛宣言をしたからってどうかなるとは思ってもいない。

でも、親父キラーな染谷さんだったら恋愛をやりのけそうな気がした。

「あー、星野センパイ、今、いやな顔したでしょ」

「う、ううん別に」

「ああいうカタブツな中に何か秘密を隠してるってドキドキすると思いませんかー」

ここにちょっとどきっとしていた人がいますけどね。

さっきまで横にいなかった牧田先輩がわたしたちのところへ近づいてきた。

「ほら、二人とも。くだらないこといってないで今日中にできる作業をさっさと片付けて」

「はーい」

やっぱり桐島課長の話になると、牧田先輩は不機嫌になる。
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