ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜
幾度となく早く休みが来ないかなと学生のような気分になってしまった。

桐島課長とは特に進展があるわけでもなく、ただ昼休みを非常階段で過ごすくらいだったし、染谷さんはチラチラと桐島課長の行動を伺っていた。

ようやく土曜になり、休日になった。

ターミナル駅へと向かい、繁華街を少し入った場所へと足を運ぶ。

ごちゃごちゃと入り組んだ雑居ビルが立ち並ぶ場所の暗くて細い路地を抜けた奥の場所にちょうどビルとビルとの谷間で日が差す、比較的新しい細長い灰色の二階建てビルの一階に月星書房はあった。

看板も目立たなく入り口あるエアコンの室外機の上にぽんと手書きの看板が置かれている。

入り口は引き戸になっていて、おそるおそるカラカラと音を立てて戸を開けた。

一歩中へ入ると、すぐ目の前にはカウンターがあり、人ひとりが立ったら狭く感じられる。

カウンターの奥のドアが開いた。

「いらっしゃいませ。お待ちしてました」

中から出てきたのは男性だった。

髪の毛は茶色の短髪にきれいに揃えられた眉毛、切れ長の目にすっとした鼻、ちょうどいい厚さの唇。

灰色のベストにYシャツ、茶色のスラックス姿だった。

きっと普通の女子だったらこういう人に憧れるんだろうな、といった雰囲気を醸し出している。

が、恋愛経験なしのわたしにとって、こういう男前な人はこんな自分に眼中ないんだろうな、とがっかりしたキモチにさせてくれた。
< 48 / 170 >

この作品をシェア

pagetop