ベタ恋!〜恋の王道、ご教授願います〜
やっぱりうまい話には何かがあるっていうから、カモにされるのかな。

「わ、わたしはただ二階堂作品の話がしたくてここへきただけで」

「確かに信じられないでしょうね。でも、どうして私に恋について話をしたんですか?」

「それは」

必死だったんだろうと思う。

これ以上年齢を重ねて恋愛も知らないんじゃ、恥ずかしい。

「ご、ごめんなさい。恋愛コンシェルジュマスターに話を聞いてほしかったんだと思います」

「素直でいいですね。みなさん、初めてのときはたいてい星野さんみたいに否定されますから」

そうだよね。

だってやっぱり信じられないっていうのは本音だし、本当に目の前にいるのが恋愛コンシェルジュマスターだっていう確証にはいたっていなかったし。

「では、これから手続きをします」

といって、二階堂さんは席を立ち、カーテンの引かれた入り口から外へ出て、ドアを開ける音がしたので隣の部屋へといったのだろう。

またすぐにドアを閉める音がして、こちらの部屋へと戻ってきた。

二階堂さんの手には紙を手にして、テーブルの上に置いた。

「こちらは恋愛マニュアル受講契約書です」

白い紙に印字された契約書には3つの事項が書かれていた。

「規約1。他言無用でお願いします」

「はい……」

「まあ、いったところで都市伝説のように扱われるのがオチですから」

「そ、そうですよね」

「あとは契約終了とさせていただき、通常受講生へ変更とさせていただきます」

「となると、料金が発生するってことですよね」

「違約金みたいな形ですかね。もちろん星野さんはそんなことをする人には見えませんので」

クスクスと二階堂さんは笑ってみせた。
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