サヨナラケイジ
「僕ならここです」


その声に振り向くと、山本先生が汗をハンカチで拭きながら立っていた。


「あ、先生」


そう声を出したのは、赤ダヌキだった。


「すみません。今、戻りました」


山本先生はそう言うと、再び私たちを見た。

外から帰ったところなのだろう。

雨にでも降られたみたいに汗だく。

その大きな体のせいで、冬でも額に汗をかいてるくらいだから、この暑さはたまらないだろうな。


「どうしたんだ?」


体に似つかわしくない小さな瞳で浩太を見る山本先生。


「あ・・・・・・」


浩太が私を見た。

ちょっと。

なんで私を見るのよ。

さっきの勢いはどこへやら、浩太は固まっている。

仕方ないなぁ、もう。
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