サヨナラケイジ
『おい! 琴葉、返事しろ!』


結城の大きな声がスマホから聞こえている。

それでも私は、ふらふらと寺田に近づいて行った。

私が近づいても寺田は微動だにしない。


「寺田・・・・・・さん?」


顔をのぞきこんだ私の目に飛びこんできたのは、目を見開いている青い顔だった。

その目は私を見ていない。

開いた口からなにかこぼれている。


「え・・・・・・?」


その時になって私は寺田の赤い服を見た。

さっきは白いワイシャツだったのに。


___違う。


ワイシャツのままだ。

じゃあ、この赤色は・・・・・・。


『琴葉!』


スマホから私を呼ぶ声が聞こえている。



ぴちゃん



寺田の口からこぼれたそれは、真っ赤な液体。
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