サヨナラケイジ
そうして、耳元に顔を近づける。


「飲まないなら、目の前でオカマ野郎を殺すぞ」


「ヒッ」


口から出たのはくやしいけれど、恐怖の声。

ガクガクと意志に反して体が震えだしている。


「俺は本気だ」


「・・・・・・」


銃口を私に向けてきた橘を見て、逆らえないことを思い知った。

抵抗をやめて目をつぶると、すぐにコップのはしが口元にあたる。

苦い味の液体が流しこまれる。


「いい子だ」


やさしく変わる声に、絶望を知る。


もうダメ・・・・・・。


ああ、こんなことになるなんて・・・・・・。

のどを通る液体は、すぐに胃に落ちてゆく。

もう逆らう気力もないまま、私を『最期』へと導く魔の液体を流しこんでゆく。

その時。


カラン。


コップが急に口元から外されたかと思うと、床を転がる音。
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