サヨナラケイジ
町の景色がどんどん後ろに流れてゆくのが不思議。

結城の手は、大きくて、力強くって・・・・・・。


心地よい?


そんなことない。

自分勝手でエラそうで、ムカつくんだから。

そうこうしているうちにも、どんどん引っ張られて歩いてゆく。

町はずれにある黒い建物の前で、結城が急に立ち止まった。


ムギュ


急に手を離され、私は結城の背中に顔をつっこむ。


「きゅ、急に止まらないでよね」


怒ったように言ってみるが、結城は気にもとめていない様子で、

「前をよく見ろ」

と、涼しい顔。


ムカつくムカつくムカつく!


ようやく友季子たちも追いつく。

友季子の顔は、見たこともないくらいニコニコしちゃってる・・・・・・。

アイスクリームで言うならば、完全に溶けちゃってるかんじ。


「結城」


橘が短く結城に声をかける。

さっきまでの声色とは違い、それは若干緊張しているように聞こえた。
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