サヨナラケイジ
よしこちゃんと別れて総合病院を出ると、まっすぐに寮に向かって歩く。

見慣れたはずの景色も、久しぶりだからかちがって見える。


騒がれていた事件も、きっとそのうち忘れ去られてゆくのだろう。


残された人の悲しみは癒えなくとも、時間がそれを置き去りにしてゆく。


曲がり角を曲がると、ようやく寮が見える。

なつかしささえ感じながら、中に入るとようやく大きく深呼吸をした。

早く友季子やよしこちゃんが戻ってこられるといいな。

そうしたら、またいつもの毎日に戻ろう。

階段をあがり、部屋のカギを開ける。


「あ・・・・・・」


ドアを開けた私の視線の先に、結城がいた。

窓辺に立って、私を見ている。


「結城さん・・・・・・」


「お帰り、琴葉」


久しぶりに見るその顔。

連日の報道や、警察の不祥事にさすがに疲れた顔をしている。


「・・・どうしたの?」


部屋のドアを閉めてから、荷物を絨毯に置いた。
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