サヨナラケイジ
男の悲鳴は大音量のBGMにかき消される。

おびえる男の顔に拳銃を向ける結城。

そして、その顔は笑っていた。



___はじめて見る笑顔だった。





警察署についたころは、すっかり夜だった。

受付にいた婦人警官に事情を話し、寮に電話を入れてもらった。

土曜日とはいえ、門限を越えるのは間違いなかったし。

刑事課は2階にあり、結城と橘は逮捕した男の手続きなどでしばらく姿が見えなくなった。


「あー楽しかったねぇ」


婦人警官がくれたペットボトルのお茶を飲みながら、興奮ぎみに言う友季子。


「なにが楽しかった、よ。全然楽しくなんかないじゃん」


「えー、でもさ、潜入捜査ってやつでしょ? そういうのに参加できるのってレアじゃない? それに、橘さん・・・・・・」


また友季子の顔がぽわーんとなってる。

まぁ、確かに合コンなんかよりは全然楽しかったけど・・・・・・。


「ちょっとトイレ行ってくるね」


友季子が立ちあがって出て行ったのと入れかわりに、結城が刑事課に入ってきた。
< 36 / 283 >

この作品をシェア

pagetop