サヨナラケイジ
まわりの刑事が挨拶しているところを見ると、若いのに部長って地位も納得。

案外、エライ人なんだな。


「待たせたな」


そう言って私を見る。

夜だというのに、疲れた顔も見せずにスーツにしわも寄ってない。

私は黙って立ちあがる。


「さっきの犯人は?」


「留置所。取り調べは明日だな」


「ふーん。じゃあこれからどうすんの?」


「ああ。帰っていいぞ」


そう言って背を向けると、自分の机らしい場所へ行く結城。

こちらを振り返りもしないで、椅子に座ると書類をめくりだす。


「・・・・・・」


しばらくそれを見ていた私だったが、だんだんとムカムカした気持ちがわきあがってくる。

ここでキレちゃだめ。

言いたいことはあっても、おさえなきゃ。


もう2度と会うこともないんだから。
< 37 / 283 >

この作品をシェア

pagetop